妊娠中の歯科検診はいつ受けるべき?|母子の健康を守るためのタイミングと注意点
2026年8月5日

「初めての妊娠で体調が優れない中、歯磨きをすると歯茎から血が出るようになって不安……」
「虫歯がある気がするけれど、レントゲンや麻酔がお腹の赤ちゃんに悪影響を与えないか心配で、歯医者に行くのをためらってしまう」
妊娠中はご自身の体調の変化だけでも大変な時期ですから、お口のトラブルに対してもこのように神経質になってしまうのは当然のことです。
こんにちは。やまざき歯科クリニック院長の山崎です。
歯科医師として多くの妊婦さんを診察してまいりましたが、妊娠中こそお口のケアが極めて重要になる時期です。なぜなら、お母さんのお口の健康状態は、お腹の中で育つ赤ちゃんの命や発育に直接的な影響を与えることがあるからです。しかし、不確かな情報によって受診を我慢してしまい、症状を悪化させてしまう方が後を絶ちません。
この記事では、妊娠中にお口のトラブルが増加する理由と、母子ともに負担なく安全に歯科検診を受けられる「ベストなタイミング」について、専門家の視点から分かりやすく解説します。この記事をお読みいただければ、妊娠中の歯科治療に対する不安が解消され、安心してケアへの第一歩を踏み出していただけるはずです。
目次
1. 妊娠中にお口のトラブルが急増する3つの理由
「妊娠すると歯が弱くなる、歯が抜ける」という昔からの言い伝えを聞いたことがあるかもしれません。お腹の赤ちゃんにカルシウムを奪われるからだと思われがちですが、医学的には間違いです。
妊娠中にお口のトラブルが増えるのには、以下の明確な理由があります。
- 女性ホルモンの急激な増加:妊娠中に増える女性ホルモン(エストロゲンなど)を好物とする「歯周病菌」が存在します。そのため、普段と同じように歯を磨いていても、歯茎が腫れたり出血したりする「妊娠性歯肉炎」に非常に罹りやすくなります。
- つわりによるブラッシング不足:つわりの時期は、歯ブラシを口に入れるだけで吐き気をもよおす(嘔吐反射)ことが増え、奥歯まで十分に磨けず汚れ(プラーク)が溜まりやすくなります。
- 食生活の変化と唾液の減少:一度にたくさん食べられず「ちょこちょこ食べ」が増えることで、お口の中が常に酸性になり、虫歯のリスクが高まります。また、唾液の分泌量も減るため、自浄作用(汚れを洗い流す力)が低下してしまいます。
2. 要注意!歯周病が引き起こす「早産・低体重児出産」のリスク
私たちが妊婦さんに最も知っていただきたいのが、「歯周病と早産」の恐ろしい関係性です。
妊娠中の歯周病を放置し、お口の中で炎症が続くと、歯周病菌や炎症物質が血管を通って全身を巡ります。これが子宮に到達すると、体が「出産準備が整った」と勘違いして子宮の収縮を促してしまい、陣痛を引き起こす引き金となってしまうのです。
結果として、予定日よりも早く赤ちゃんが生まれてしまう「早産」や、2,500g未満で生まれる「低体重児出産」のリスクが、健康なお母さんに比べて数倍に跳ね上がると言われています。これは、高齢出産や喫煙、アルコール摂取よりも高いリスク因子であるとする研究データもあるほどです。「たかが歯茎の腫れ」と侮らず、プロのケアで炎症を抑えることが赤ちゃんの命を守ることに直結します。
3. 歯科検診・治療に最適なタイミングは「安定期」
では、いつ歯医者に行けば良いのでしょうか。妊娠の時期(週数)によって、受けられる治療の範囲が異なります。
3-1. 妊娠初期(15週まで):つわり等で無理は禁物
赤ちゃんの器官が形成される非常にデリケートな時期であり、お母さんもつわりで体調が不安定になりがちです。この時期は無理に治療を進めることはせず、痛みが強い場合の「応急処置」にとどめるのが基本です。まずは体調を最優先にしてください。
3-2. 妊娠中期(16〜27週・安定期):検診・治療のベストタイミング
つわりも落ち着き、胎盤が完成して流産のリスクも下がる「安定期(妊娠5〜7ヶ月)」が、歯科検診や治療を行うのに最も適したベストタイミングです。
虫歯の治療や、クリーニング(歯石除去)などは、この時期に済ませておくことを強くお勧めします。出産後は赤ちゃんのお世話で手一杯になり、ご自身の通院時間を確保するのは想像以上に難しくなるためです。
3-3. 妊娠後期(28週以降):応急処置にとどめ、出産後に
お腹が大きくなると、診療台で仰向けに寝る姿勢自体が非常に苦しくなります。
院長からの分かりやすい補足:仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群とは
大きくなった子宮が、仰向けになることでお母さんの背中側にある太い静脈を圧迫し、血圧が急激に下がって気分が悪くなる症状です。
いつ陣痛が起きてもおかしくない時期に入るため、基本的には大規模な治療は避け、出産後の体調が回復してからの治療再開をご提案します。
4. 妊婦さんがよく感じる「3つの不安」に院長が答えます
当院に寄せられる、妊婦さん特有の不安や疑問にお答えします。
4-1. レントゲン撮影はお腹の赤ちゃんに影響しない?
【結論:心配ありません】
歯科のレントゲンはお口という非常に限られた部分にのみエックス線を当てます。お腹からは離れていますし、撮影時には必ず「鉛の防護エプロン」を着用していただくため、胎児への被ばく量は実質ゼロに等しい極めて安全なレベルです。見えない虫歯を放置するリスクの方がはるかに高いと言えます。
4-2. 歯科用の麻酔注射は打っても大丈夫?
【結論:問題ありません】
歯科治療で使うのは「局所麻酔」です。打った歯の周辺でのみ分解されるため、お腹の赤ちゃんに麻酔成分が届くことはありません。むしろ、麻酔を使わずに痛みを我慢し、お母さんが過度なストレスを感じる方が、赤ちゃんにとって悪影響を及ぼす可能性があります。
4-3. 治療中の姿勢(仰向け)が苦しくないか心配……
【結論:無理のない姿勢で少しずつ進めます】
当院では、妊婦さんの体調変化に細心の注意を払っております。診療台(チェア)を完全に倒さず、少し起こした楽な角度で治療を行ったり、こまめにうがいや休憩を挟んだりして、お身体に負担がかからないよう配慮しています。もし途中で息苦しさや吐き気を感じたら、いつでも左手を挙げて合図してくださいね。すぐに治療を中断します。
5. まとめ:お母さんの健康なお口が、赤ちゃんへの最初のプレゼント
生まれたばかりの赤ちゃんのお口には、虫歯菌は存在しません。実は、お母さんやお父さんが使ったスプーンで食事を与えたり、キスをしたりするスキンシップを通して、大人のお口から虫歯菌がうつってしまう(母子感染)ことがほとんどなのです。
お母さんが妊娠中からお口を清潔に保ち、虫歯菌や歯周病菌を減らしておくことは、生まれてくる赤ちゃんの将来の歯を守るための「最初のプレゼント」になります。
「ちょっと気になる」程度の些細な症状でも構いません。母子手帳を受け取ったら、ぜひ一度ご自身の歯の健康状態をチェックしにいらしてください。
立場で妊娠中の歯科検診やマタニティ歯科についてのご相談なら、やまざき歯科クリニックへお任せください。お母さんと赤ちゃんの健やかな未来のため、スタッフ一同、温かく丁寧なサポートをお約束いたします。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者情報
院長
入れ歯やインプラント等の「補綴(ほてつ)」を専門とし、地域の皆様が歯を失わないための予防歯科や精密治療に注力。マイクロスコープやCT等の最新設備を導入し、これ以上歯を失わないための有効な手段としてインプラント治療にも力を入れている。「歯を守るために、今からできること」を大切に、日々診療にあたっている。
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